乳幼児歯科のQ&A

  1. 泣いたり、ぐずったりしたときに、ついおしゃぶりを使ってしまいます。
    いつごろまでなら使ってもいいですか?

     おしゃぶりは、子供を落ちつかせたり、不安を解消する効果があるため、泣きやませたり、ぐずりを止めるためには便利なものです。しかし、泣くたびに与えたり、寝かせつけるために与えていると、癖になって止めにくくなってしまいます。2歳を過ぎて、乳歯の奥歯が生えそろう頃になると、おしゃぶりを長時間使う子供のかみ合わせに問題が出てくるという報告もあります。便利だからといって頼りすぎないようにして、1歳を過ぎたら与える頻度を減らしていき、2歳ごろには止められるようにしましょう。

  2. 親のむし歯が多いと子供もむし歯になりやすいのですか。
    それは遺伝ですか?

     子供の口の中の細菌を調べると、お母さんと同じタイプの菌が見つかることが多いといわれています。口の中の細菌は、身の周りの人からうつる確率が高いと思われます。親にむし歯が多いと、それだけ細菌も多いことが考えられ、子供に菌がうつりやすいともいえますが、菌がうつったからすぐむし歯になるわけではありません。むし歯が多いのは、遺伝というより生活習慣の問題です。食生活に気をつけ、お口のケアをしっかりすれば、むし歯は防げます。
     また、菌がうつることが気になるなら、家族で一緒に歯みがきする習慣を早めにつけて、親・子ともにお口を清潔にすることが第一です。

  3. フッ素を塗るとむし歯にならないのでしょうか?

     フッ素を塗ると、歯の表面のエナメル質が丈夫になって、酸などに対する抵抗力がつくため、虫歯予防の効果はあります。しかし、歯の表面をコーティングするようなものではないので、お口の中の環境が悪いとむし歯はできてしまいます。フッ素を塗ったあとも、食生活や歯みがきに十分気をつけることが、フッ素の予防効果を高めます。

  4. キシリトールだと本当にむし歯にならないのですか?

     キシリトールはむし歯の原因になる細菌に利用されにくい糖なので、キシリトールだけでは確かにむし歯になりません。ただ、歯みがきのかわりになるものではないので、キシリトールガムをかむだけでむし歯を予防することも難しいといえます。むし歯予防のためにキシリトールを利用するなら、親のしっかりした理解が必要です。
     むし歯予防の基本は食生活と歯みがき。まず正しい生活習慣を身につけさせることでしょう。

  5. 歯みがき剤はいつ頃から使ったらいいのでしょうか?

     歯みがき剤は、低年齢の子どもではあまり使う必要はありません。とくに3歳未満のうがいができないうちは、子ども自身に使用させることは控えます。ブクブクうがいができるようになって、子どもが使ったほうが歯みがきに意欲がでるようなら、フッ化物配合のものを用いるといいでしょう。 その場合も、ピーサイズ(えんどう豆の大きさ)くらいで十分です。

  6. 乳歯の生えるのが遅めなのですが、離乳食は普通に進めていいのでしょうか?

     新しく厚生労働省から出された「授乳・離乳の支援ガイド」でも、乳歯の生え方と咀しゃく機能の発達に合わせて離乳食の調理形態を進めていくよう示されています。離乳の開始は歯のない時期で問題ありませんが、歯ぐきでつぶしたり、歯を使ってかむような食べ物は乳歯の生え方に応じてゆったりと進めていきましょう。離乳の完了も少しゆっくりめに考えた方がいいと思います。

  7. 食べ物の好き嫌いが多く、困っています。

     食べ物の好き嫌いは、子どものうちから多かれ少なかれみられやすく、また年齢でも変化します。とくに、低年齢では味や好みというより、うまくかめなかったり、口の中でまとめられなかったりする食材を嫌ったり、口から出してしまう傾向もみられます。家庭でよく出される食べ物にはなじみやすく、親が嫌いな食べ物にはなじみにくいともいわれています。家族と一緒の食卓で、少しずつ体験していくうちに徐々に食べられるものの幅も広がってくると思われます。調理形態の工夫や、楽しい食卓の雰囲気づくりをして、苦手な食べ物やなじみの少ない食べ物にも手を伸ばせるようにしていきましょう。

  8. 赤ちゃんなのに歯ぎしりをします。歯がすり減ってしまわないか心配です。

     上下の前歯が出てくると、歯ぎしりをする赤ちゃんは少なくありません。上の歯と下の歯がどう噛み合うのか歯と歯を合わせて試しているのでしょう。1歳前後のこの時期には、おもちゃや身の周りのものを何でもかんでみるという“かみあそび”がみられやすいものです。このような練習をつんで、前歯を使って食べ物をかむという行動が獲得されます。口の機能発達のワンステップとして受け止めましょう。ただし、あまり長時間はぎしりをしているような時は、声をかけたり、他の遊びに誘ってあげてください。

  9. 指しゃぶりが続いています。上の前歯が出てきているようで心配ですが、やめさせた方がいいのでしょうか?

     赤ちゃんの時期の指しゃぶりは口の機能発達面での意義が大きいものですが、乳歯が生えてくるとしゃぶる行為の意味合いも異なってきます。
     1〜2歳代では気分を鎮めるための指しゃぶりがみられやすく、3歳を過ぎると”くせ”として日常生活に定着する子が出てきます。乳歯の奥歯がそろってきた後も指しゃぶりが続くと、歯並びやかみ合わせへの影響が出やすくなります。周囲の人達との関わりが少なかったり、言葉の発達の遅い子どもでは一人遊び的な指しゃぶりが残りやすく、緊張や不安の強い子供では気分鎮めの指しゃぶりが続きやすいものです。
     子どもの発達状況や性格、生活背景などをみながら、生活環境の調整や対応を工夫していくことが大切です。また、子ども自身の自覚がでてきたら、やめようとする気持ちをサポートしていくことも重要です。

〈神奈川県歯科医師会 発行 冊子より〉

©一般社団法人平塚歯科医師会