虫歯に悩まされた将軍

NHK大河ドラマ『篤姫』が始まりますが、篤姫が天璋院となり支援していた第14代将軍家茂は出っ歯で最も虫歯が多かった将軍の一人です。
20歳で亡くなった時の顎の骨を見ると、永久歯32本の中で親しらず1本は完全に脱落し、残り31本中30本が虫歯でした。上下の奥歯の内6本は歯茎より上の部分が全くなくなって大きな穴があいています。前歯も虫歯が神経にまで達しているところがあります。  「さぞや痛かっただろうなあ。」と推察されます。
亡くなる直前の公卿、諸大名からの見舞品のうち食料品は、白砂糖、五色砂糖、氷砂糖、懐中ぜんざい、もなか、など甘い菓子ばかり。甘いものが好きだったと思われますが、「甘いものを食べると虫歯になりやすい、と知らなかったから。」と気の毒な気がします。
もともと、徳川将軍家は3代目以降貴族化が進み、60歳という最も長生きした12代家慶でさえ、歯は、咀嚼による摩耗が全くなく真珠のように滑らかで光沢があったそうです。噛む必要のないほど柔らかいものばかり食べていたということです。日光に当たったり、散歩したりすることも制限されていた生活。いかにも不健康そうです。
『篤姫』原作では家茂の死因は、15代将軍慶喜による暗殺と天璋院は信じていますが、実際は虫歯がもとで体力が低下し脚気の悪化に拍車をかけ、脚気衝心を併発したと疑うことができます。 不健康な生活、噛み応えのあるものを食べない、甘いものばかり食べる、歯を磨かない・・・ あなたの生活は貴族化していませんか?

参考:『骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと』 鈴木 尚 著 東京大学出版会『天璋院 篤姫 上・下』 宮尾 登美子 著 講談社文庫

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